Monthly Archive 5月 2019

株式会社こどもみらい、従業員の心身の不調で生産性が低下する現象「プレゼンティズム」に関する研究に協力

―仕事のストレスや周囲のサポートは睡眠や心身のストレス反応を起こし、生産性を低下させることが判明―

心身の不調で従業員の生産性が損なわれる現象「プレゼンティズム」について、株式会社こどもみらい(本社:東京都世田谷区)のデータを元に東京医科大学精神医学分野の 古市亘医師らが研究した結果が、第92回日本産業衛生学会で発表されました。

この研究は、職業性ストレスが心身の不調や睡眠の問題を惹起することによってプレゼンティズムにどのような影響を与えるのか、また、どのような媒介効果が生じているのかを検討したもので、2017年にストレスチェックや睡眠に関する問診など(*1)を実施した17事業所の従業員 計3314名のうち、学術的利用や発表に同意した2905名を分析の対象としています。

学術的分析(*2)の結果、ストレスチェックで測定される「仕事のストレス」と「周囲のサポート」の問題は、睡眠の問題や心身のストレス反応を引き起こし、それを介して生産性を低下させていることが示されました。さらには、睡眠の問題の方が、仕事のストレスや周囲にサポートよりも、生産性に与える影響が大きいことが示されました。このことから、労働者のストレスケアを行うと同時に睡眠の問題を評価し、解決することが、公衆衛生上、また、社会経済的にも重要であり有益であると考えられます。

株式会社こどもみらいでは今後も、大学との協働など「科学的根拠のある健康経営」を支援するための活動を進め、ストレスチェック「STRESCOPE」や睡眠改善プログラム「eSLEEP」などのサービス改善に努めて参ります。

 

*1 Work Limitation Questionnaire(WLQ)による労働生産性(プレゼンティズム)に関する問診票、ピッツバーグ睡眠問診票(PSQI)をはじめとする睡眠に関する問診票、職業性ストレス簡易調査票

*2 生産性(WLQ)、睡眠の問題(PSQI)、職業性ストレス簡易調査票の各項目の相互の影響をパス解析(共分散構造分析)により評価した。収集段階でデータは完全に匿名化されており、研究にあたっては東京医科大学医学倫理委員会の承認を得た。

 

学会発表概要

第92回日本産業衛生学会

発表日時:5月25日(土)11:00 – 11:40

発表場所:名古屋国際会議場 ポスター会場(1 号館1 階 イベントホール)

発表者:古市 亘( 東 京医科大学 精神医学分野)

演題名:職業性ストレス、ストレス反応、睡眠の問題がプレゼンティズムに与える影響

演題番号:P3-50

 

株式会社こどもみらいについて

株式会社こどもみらい(https://cfltd.co.jp/)は、科学的根拠に基づいた健康経営を推進するプロフェッショナルチームです。睡眠と健康に関する研究「Sleep&HealthResearch」、睡眠改善プログラム「eSLEEP」、多⾯的なストレス対策の要となるストレスチェック「STRESCOPE」などを提供しています。

 

STRESCOPEについて

STRESCOPE(https://strescope.jp)は、株式会社こどもみらいが提供する、医学的根拠に基づいた具体的な提案によりストレス改善を目指すためのストレスチェックサービスです。厚労省所定の項目に独自の項目を加えてストレス要因を特定し、個人向けに生活習慣の観点も含めた具体的な改善提案を行うほか、集団分析により企業が取り組むべき事項を明らかにするなど、健康経営のための投資対効果にこだわり、精神科医・産業保健師を含むプロフェッショナルチームにより運営されています。

 

本件に関するお問合せ先

株式会社こどもみらい info@strescope.jp

コーヒーを飲むとぐっすり眠れなくなる!?

コーヒーを飲むとぐっすり眠れなくなる!?

 

コーヒー文化は、江戸時代にオランダ商人が長崎の出島に持ち込んだものと言われています。それから約200年、コーヒー文化は定着し、いまや中高生からビジネスマン、お年寄りまで毎日の生活にコーヒーを欠かせない方が多いのではないでしょうか。その一方で、コーヒーを飲んだらぐっすり眠れなかった、なんて経験がある方もいるのではないでしょうか。今回は、睡眠とコーヒーに含まれるカフェインについて、お話ししていきたいと思います。

 

カフェインってどんなもの?

コーヒーには眠気覚ましの効果があるため、試験勉強の最中や重要な会議の前にコーヒーを飲むという習慣がある人も多いでしょう。眠気覚ましの効果があるのは、コーヒーに含まれるカフェインの影響です。カフェインには、中枢神経を覚醒させ、眠気や疲労感を軽減する作用があります。また、通常の量であれば学習と記憶に影響し、覚醒度を高めることによって一時的に反応時間、集中、運動コントロールを向上させる効果があることも明らかになっています。

さて、カフェインが含まれている飲料にはどのようなものがあるでしょうか? 以下の表1をご覧いただけるとわかるように、コーヒーのみならず、お茶、栄養ドリンク、チョコレート、ココアにもカフェインが含まれています。

 

表1

 

 

カフェイン摂取の弊害

カフェイン摂取には、上記のように眠気や疲労の軽減というメリットがありますが、摂取のタイミングや量を誤ると、寝つきや睡眠の質を悪化させてしまうという弊害があります。

このことは多くの学術論文にも掲載されています。例えば、就寝1時間前と3時間前にコーヒーを1杯ずつ飲んだ場合、睡眠潜時(入眠するまでにかかる時間)の延長、睡眠時間の短縮、睡眠の質の悪化がみられることが明らかにされています(表2)。

 

表2

 

さらには、就寝6時間前(多くの場合夕方)であっても、400mgのカフェインを摂取すると睡眠の質が悪化することが解明されています。すなわち、夕食後にコーヒーやエナジードリングを飲むと睡眠に悪影響が及んでしまうのです。

 

CAROLINE DRAPEAU,J. Sleep Res.(2006)15,133–141

Christopher Drake, Ph.D., Journal of clinical sleep medicine, Volume 09 No. 11

 

カフェイン摂取のタイミングと量に注意!

上記で説明してきたように、寝つきの良さを保ち、睡眠の質・量を確保するためには、カフェイン摂取のタイミングと量に留意する必要があります。摂取したカフェインの血中濃度が半分になるまでにかかる時間(半減期)は、3~7時間です。このため、カフェイン量を多く含むコーヒーは、昼過ぎ以降は飲まない方がよいでしょう。緑茶やウーロン茶であっても、夕食後は控えることが理想的です。

最近は、美味しいカフェインレスコーヒーが比較的手軽に入手できるようになってきました。またハーブティーや麦茶、ごぼう茶など、茶葉を含まないお茶であればカフェインを含みませんので、寝る前のリラックスタイムにお薦めです。

近頃ぐっすり眠れないなぁと感じていたら、カフェインの摂り方を見直してみてはいかがでしょうか?

働き方改革における「産業医・産業保健機能」の強化

働き方改革関連法により、2019年4月1日より産業医の企業における在り方が見直され、「産業医・産業保健機能」等が強化されました。

産業医の選任は法律義務の遵守が目的であって、産業医を選任することのメリットを理解できていないという企業も多いかと思います。産業医はその活用法によっては、企業にとって重要な経営戦略となり得ます。働き方改革をきっかけに貴社における産業医の活用法を見直してみてはどうでしょか?

今回は、産業医の役割について整理し、働き方改革関連法による「産業医・産業保健機能」の強化について説明していきたいと思います。

 

  1. 産業医とは

産業医とは、事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。従業員のこころやからだの健康を守り、事故や疾患を未然に予防すること、また、従業員の心身の健康相談に応じたり、就労の適否や必要な配慮を判断したりすることがメインの業務になります。

労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられています。具体的には50人以上の事業所には、1名以上の産業医を置くことが必要になります。

 

  1. 産業医の役割

産業医の業務は、労働安全衛生規則第14条第1項に規定されており、具体的には次の事項で、「医学に関する専門的知識を必要とするもの」と定められています。

  • 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
  • 作業環境の維持管理に関すること
  • 作業の管理に関すること
  • 労働者の健康管理に関すること
  • 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
  • 衛生教育に関すること
  • 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること

上記のように産業医の業務は、従業員の健康管理のみならず、職場環境の整備も含まれ、企業経営に関して多岐にわたるのが通常です。すなわち、産業医は、従業員の健康を守るだけでなく、リスクマネジメントの視点から経営者もお守りするのです。リスクマネジメントとして、職場環境の顕在的・潜在的な問題点をあぶり出し、それを除去・コントロールすることの重要性を指摘する、それも産業医の役割で、経営リスクを低減することが可能となります。産業医はただのコストではなく、経営戦略の一つとして位置づけられるのです。

 

  1. 働き方改革関連法による「産業医・産業保健機能」の強化

「産業医・産業保健機能」の強化は、主に、産業医への情報提供義務、産業医からの勧告、産業医等による健康相談、産業医の職務内容等の周知徹底に関してなされています。以下において具体的にみていきましょう。

  • 産業医への情報提供義務

事業者は、産業医に対して、労働者の労働時間に関する情報や労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない、という内容が追加されました。これに伴い、事業者は労働者の健康情報の収集や保管・使用・管理についてルールを定め、適正に取り扱わなければなりません。

  • 産業医からの勧告

産業医は、「労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる」とされました。これにより、事業者は、産業医から労働者の健康管理等について勧告を受けた場合、事業所の労働者や産業医で構成する衛生委員会などに報告義務が発生します。従来は、勧告を受けてもその内容を尊重しなければいけないという程度であったため、この点は法律改正によって大きく変更された点になります。

  • 産業医等による健康相談の強化

産業医が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない、との定めが新設されました。事業者の中にはこれまでにも労働者の健康相談を精力的に実施してきたところもありますが、近年の過労死問題なども踏まえ、体制を整備して産業医等による健康相談の機会をさらに増やそうという目的です。

  • 産業医の職務内容等の周知義務

上記に関連し、事業者は、その事業場における産業医の業務内容その他の産業医の業務に関する事項を、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けることにより、労働者に周知されなければならない、とされました。いつ産業医が来るのか、どのようにすれば相談を申し込めるのかなどを、社内のイントラネットに掲示する、などの取り組みが今後は必要です。

上記のうちで、特に注意しなければならないポイントとしては、産業医への情報提供義務です。義務の対象とされている内容は、いずれも労働者に心身の不調が生じていること、またはその可能性が高いことをうかがわせる事情です。これらの点について、情報提供義務を果たしていない場合、労災事故につながるだけでなく、安全配慮義務違反となるリスクがあります。まずは、心身の不調が生じている労働者の情報を適時適切に吸い上げ、産業医に伝えるという仕組み作りをしましょう。そのうえで、心身の不調が生じた労働者に対して、たとえば残業時間の削減など、産業医の意見を受けて事業者が何らかの具体的な対応を行うことがポイントです。これに関してはエビデンスを残しておくのがよいでしょう。

仕事のストレスや周囲のサポートに関わらず、睡眠の問題が離職リスクを高めることが判明 ―株式会社こどもみらいが参加した研究が学会発表へ―

株式会社こどもみらい(本社:東京都世田谷区)学術部が参加した研究により、睡眠の量・質・リズムの問題で離職リスクが有意に高まることが判明しました。この研究結果が、第92回日本産業衛生学会で発表されます。

この研究は、2016年にストレスチェックや睡眠に関する問診など(*1)を実施したIT系企業の従業員のうち、学術的利用や発表に同意した574名をその後24ヶ月追跡したもので、この期間に12.9%にあたる74名が離職していました。

学術的分析(*2)の結果、仕事のストレス要因や周囲のサポートなどの職務要因とは独立して、睡眠および睡眠リズムの問題は離職リスクを有意に高める要因であることがわかりました。このことから、睡眠の評価とその改善は健康対策のみならず、企業経営上も重要である可能性が示されました。

なお、今回の研究結果は以下の技術にも反映されています。
退職を就職前に予防する ~離職リスクを生活習慣と睡眠で算出する技術、特許査定取得のお知らせ~(2018年10月11日発表)

株式会社こどもみらいでは、今後も「科学的根拠のある健康経営」を支援するための活動を進め、ストレスチェック「STRESCOPE」や睡眠改善プログラム「eSLEEP」などのサービス改善に努めて参ります。

 

*1 57項目版の職業性ストレス簡易調査票、ピッツバーグ睡眠問診票(PSQI)、および睡眠スケジュールに関する設問によるストレスチェック

*2 単変量および多変量のCOX回帰分析を実施し、離職に与える睡眠関連パラメータの影響を分析した。離職の理由は問うておらず、all-causeretirementが測定されている。分析に供された回答や勤務データは全て匿名化されている。

 

学会発表概要

第92回日本産業衛生学会

発表日時:5月25日(土)9:00 – 10:00

発表場所:名古屋国際会議場 第11 会場(2 号館2 階 会議室222 + 223

発表者:志村哲祥(東京医科大学 精神医学分野・株式会社こどもみらい学術部)

演題名:睡眠および睡眠リズムの問題は職務要因とは独立した有意な離職リスク因子である

演題番号:O38-02

株式会社こどもみらいについて

株式会社こどもみらい(https://cfltd.co.jp/)は、科学的根拠に基づいた健康経営を推進するプロフェッショナルチームです。睡眠と健康に関する研究「Sleep&HealthResearch」、睡眠改善プログラム「eSLEEP」、多⾯的なストレス対策の要となるストレスチェック「STRESCOPE」などを提供しています。

STRESCOPEについて

STRESCOPE(https://strescope.jp)は、株式会社こどもみらいが提供する、医学的根拠に基づいた具体的な提案によりストレス改善を目指すためのストレスチェックサービスです。厚労省所定の項目に独自の項目を加えてストレス要因を特定し、個人向けに生活習慣の観点も含めた具体的な改善提案を行うほか、集団分析により企業が取り組むべき事項を明らかにするなど、健康経営のための投資対効果にこだわり、精神科医・産業保健師を含むプロフェッショナルチームにより運営されています。

本件に関するお問合せ先

株式会社こどもみらい info@strescope.jp