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[コラム・研究レビュー] 眠りといのち

睡眠の問題は、前述のコラムのように、身体的・精神的問題を引き起こし、疾患リスクを高め、死亡率の増加と寿命・健康寿命の短縮を招きます。

睡眠の「量」と生命

平均的には7~8時間睡眠が最も死亡率が低い、ということはよく知られていますが、特に中年以降にメタボリック症候群と短時間睡眠が合併すると、死亡率が倍以上に跳ね上がり、20年後には40%が死亡することが知られています。

Journal of the American Heart Association, 2017, 6.5: e005479.

睡眠の「質」と生命

男性において、短時間睡眠(6時間未満)に不眠症状が合併すると死亡率は4.3倍になります。高血圧や糖尿病例でこの傾向は顕著になり、死亡率は7.2倍になることが知られています。

Sleep, 2010, 33.9: 1159-1164.

睡眠の「リズム」と生命

夜型の者が朝型勤務を続けるなど、リズムに対処することなく、継続的に自らの体内時計に適合しない生活を慢性的に続けると、様々な疾患リスクが高まり、死亡率が10%上がります。

Chronobiology international, 2018.

[コラム・研究レビュー] 眠りとからだ・こころ

眠りとからだ

日常の活動で生じた体の組織や遺伝子の損傷は、睡眠中に修復されます。また、睡眠中に、組織の各種成長因子などの物質(ホルモン)が分泌されます。睡眠の問題は体の修復機構を機能不全に陥らせてしまうため、かなり多岐に渡る疾患のリスクとなります。

睡眠の「量」「質」「リズム」と生活習慣病(メタボリックシンドローム)

短時間睡眠は様々な基礎疾患に関わります。7~8時間睡眠の者に比較すると高血圧リスクは66%、肥満リスクは55%増加し、脳梗塞リスクが15%、心筋梗塞リスクが48%増加します。人は睡眠中に血圧を低下させ血管を修復し、また、代謝を促すホルモンを分泌します。

中途覚醒(睡眠維持障害)が存在すると、糖尿病リスクが84%増加します。

そして体内時計のリズムと異なった時間での活動を余儀なくされる場合、たとえば休日と平日の睡眠時間帯が1時間乖離するごとに肥満リスクは3.3倍に、あるいはシフトワークを伴う業務に就くと、肥満リスクは1.8倍になります。

Sleep 31.5 (2008): 619–626, Sleep 29.8 (2006): 1009–1014, European Heart Journal 32.12 (2011): 1484–1492, Diabetes Care 33.2 (2010): 414-420, Current Biology 22.10 (2012): 939-943, International Journal of Epidemiology 38.3 (2009): 848–854

 

睡眠の「量」「リズム」と癌

短時間睡眠は、体が遺伝子のエラーを修復する時間を奪います。6時間未満睡眠は女性の乳がんリスクを62%増加させ、男性の前立腺がんリスクを34%増加させます。

また、交替勤務への就労はがんのリスクを高め、たとえば乳がんリスクを1.3倍にします。特に、朝型な者を夜型勤務に頻繁に配置すると、リスクが3.9倍になります。

British Journal of Cancer 99 (2008) 1502–1505, British Journal of Cancer 99 (2008) 176–178, American journal of epidemiology 173.11 (2011): 1272-1279, Occup Environ Med 69.8 (2012): 551-556.

 

眠りとこころ

日中の活動やストレス等によって損傷を受けた神経は、睡眠中に修復され、また、シナプスの形成・固定も主に睡眠中に行われます。また、睡眠は情動の整理の役割も持っています。睡眠の問題は脳のメンテナンスの時間を奪ってしまうことで、うつ病などの精神疾患のリスクを増加させ、究極的には自殺リスクを高めます。うつは不眠を伴いますが、うまく眠れないこと、眠らないこと、それ自体もうつを引き起こします。

不眠症状とうつ・不安

「うつ」がなかった人でも、不眠症状が存在していると、その後うつ病になる危険性が2.1倍以上になり、不安症状を生じる危険性は4.3倍となります。

特に若年成人では、2週間以上の不眠が続くと、その後にうつ症状を発症するリスクが1.9倍になります。

Journal of affective disorders 135.1-3 (2011): 10-19, BMC psychiatry 16.1 (2016): 375, psychosomatic research 64.4 (2008): 443-449, Sleep 31.4 (2008): 473-480.

短時間睡眠と自殺

6時間未満の睡眠を継続的に続けている者は、直近1年間での自殺企図の確率が5.1倍でした。そして短時間睡眠はうつ症状とは独立して、自殺企図リスクを上昇させます。

Sleep 31.8 (2008): 1097-1101.

体内時計によって、個人がイキイキと働ける時間は異なる…学会口演のお知らせ

人にはおよそ24時間周期の体内時計があります。寝起きだけでなく、心臓や内臓のリズム、血圧や体温、思考能力、身体能力も、24時間周期で活発になったり休んだりのサイクルが存在します。

今回、こどもみらいのSTRESCOPEの中から同意の得られた約3000名のデータを用いて、クロノタイプ(朝型夜型傾向)と勤務時間帯とパフォーマンスの関係を調査しました。

その結果、体内リズムと生産性に密接な関係があることが明らかになり、特に夜型の社員では、出勤時刻を早めれば早めるほど、生産性が低下します。

この調査研究により、それぞれの社員に応じて、「この従業員は本当は何時から働かせるのが良いのか」ということを科学的に導き出すことが可能になりました。

本結果は下記の学会で発表されます。

第91回日本産業衛生学会
発表日時 2018年5月17日(木) 10:40-11:40
発表場所 熊本市国際交流会館6Fホール(C会場)
演者 志村哲祥医師(東京医科大学精神医学分野 睡眠健康研究ユニットリーダー/STRESCOPE統括実施医)

図: 体内時計は睡眠の質と心身のコンディションを介して生産性に影響を与える

 

今後もこどもみらいでは「科学的根拠に基づく健康経営」を支援してまいります。

「睡眠のゴールデンタイム」なんてものはない?!

「夜22時~2時までは、お肌のゴールデンタイム」なぜなら、成長ホルモンが沢山出る、この時間帯に眠ると、お肌がつやつやになって若返る(*´ω`*)「成長ホルモン」は「美肌ホルモン」だから、この時間帯を死守しなければ!!

この都市伝説を、まだ信じている人はいますか?

睡眠のコールデンタイムは22時~2時で、このコールデンタイムに眠らないと成長ホルモンが出ないという言説がありますが、これは誤りです。

睡眠と成長ホルモンの分泌との関係を調べた研究報告が1991年にあります。この研究では、被験者を最初に22時頃から7時頃まで眠らせた時、22時から2時位の間で多量に成長ホルモンが分泌されています。これがおそらく「22時~2時はゴールデンタイム」の根拠となっているものと思われますが、この下図の続きを見てください。


翌日の22時~2時に徹夜をさせた結果、成長ホルモンは出なくなっていますが、徹夜明けで 昼間に眠った時、昼の11時~14時位にも多量に成長ホルモンが出ているのが分かります。

つまり、成長ホルモンは「睡眠の最初の熟睡時」に大量に分泌されます。時間帯は関係ありません。もっとも、 変な時間に寝起きするとうまく熟睡できないことがあるため、「22時~2時ゴールデンタイム説」が完全に嘘というわけでもないのですが この時間を過剰に気にする必要はありません。
「ある程度の時間ちゃんと熟睡できていれば、別に22時に眠っていなくても、成長ホルモンは出る」ということです。

「成長ホルモン」は、睡眠中に集中的に分泌され、 全身の組織が修復されます。 子どもでは身体の成長も促されます。22時~2時でなくとも、しっかり睡眠時間を確保して熟睡をすることがお肌にとっても大切です。

いっぽう、皮膚の老化については、主に紫外線の影響が大きいとされています。トラックドライバーの窓側の頬と反対側の頬の皮膚の老化速度、プロゴルファーのグローブをしている側の手背としていない側の手背の皮膚の老化速度を比較した研究があり、窓側の頬の皮膚、グローブをしていない側の手背の皮膚の方が、老化速度が速いという結果が出ています。熟睡対策と同時に紫外線対策もおこたりなく!

(参考文献)

出典: Am J Physlol Regul lntergr Comp Ptiysiol. 279: R874-883, 2000.

 

睡眠不足で風邪をひきやすくなる!

アメリカで2009年に行われたある実験があります。

21歳~55歳までの男性78名女性75名に、鼻の中に風邪のウイルス(ライノウイルス)を付着させ、その後2週間、風邪の発症率と睡眠の良好度合いを調べたというもの。

結果、睡眠効率の悪い群は2人に1人が発症。睡眠効率の良い群と比較して、5.2倍も、睡眠不足が感染症罹患率を上昇させることが明らかにされました。

睡眠負債、睡眠コントロールによる生産性アップ、と働き方改革の中で睡眠関連のことが騒がれていますが、そもそも睡眠の質と量をコントロールしなければ、病気の罹患率が上がるということは、他の疾患でも多々証明されています。

出典:Clhen S et al Arch Intern Med 169 2009

ボケないための若いうちからの健康管理-睡眠

代表的な認知症の原因疾患、アルツハイマー。
アルツハイマーでは、脳の中に「タウ蛋白」「βアミロイド」といった神経毒性を持つ老廃物が蓄積してしまい、脳の神経細胞が死滅し、認知症が発症することが知られています。
この老廃物をいかに蓄積させないかで重要なのが、睡眠。

脳は寝ている間に神経と神経の間の隙間の空間を広げ(起きている時の1.5倍以上にスペースが広がります)、老廃物を排出しています。 (Lulu et al., 2013)

さらには、βアミロイドなどの老廃物が貯まると今度は眠りにくくなるという悪循環が生まれてしまうようです。(Bryce et al., 2015)

睡眠が悪化していると血圧や糖尿病にも悪影響をおよぼすことを知られています。つまり、将来ボケないためには、睡眠を大切にする必要があります。

酔っ払いながら仕事をしている従業員?…睡眠不足の意味

みなさんの睡眠時間は足りていますか?

夜に、質も量も充分な睡眠がとれているかどうか確かめる一番簡単な方法は、「昼間何もしないでぼーっとしている時に、『居眠りをしてしまうかどうか』」。もし昼間ウトウトすることが多ければ、おそらくあなたは睡眠不足です! (それか、何か睡眠の質が悪化する問題を抱えています)

人によって必要な睡眠時間は大きく異なりますが、平均的には、下記の睡眠時間が(世界的な)年代ごとの平均睡眠時間です。 (論文: Roffwarg et al., “Ontogenetic development of the human sleep-dream cycle.” Science. 1966. Apr 29;152(3722):604-19.)

幼稚園に通うような年代であれば、1日の半分以上は睡眠が必要。小学生なら、10時間弱。中高生なら、9時間くらい。20代の社会人で、およそ8時間くらいになります。

この必要な時間を下回ると、昼間の眠気が出てきます。なお、睡眠不足の影響はおよそ14日引きずると言われています。7時間睡眠が必要な人が1日1時間ずつ睡眠不足を起こしていると、1週間後には1晩徹夜したのと同じ睡眠不足が溜まってしまいます。

眠気が残る以外には特に問題がないのでしょうか? 眠いと当然ですがパフォーマンスが低下します。集中力が低下して、ミスが増えて、同じ時間にこなせる仕事量は減っていきます。

では、眠気とパフォーマンスはイコールなのでしょうか? 実は、違います。

眠気には限度があり、実は1晩徹夜しても2晩徹夜しても、あるいは毎日少しずつ睡眠不足を重ねていても、眠気自体はそれほど変わりません。どのくらい昼間眠いか、どのくらい居眠りをしやすくなってしまうかに関しては、ある程度以上睡眠不足が溜まっていれば、あまり差は生まれないのです。

しかし、パフォーマンスは溜まっている睡眠不足に比例して悪化していきます。

2晩徹夜した人は、1晩徹夜した人よりもはるかに多くミスを起こし、単位時間あたりに処理できる情報量が下がります。毎日2時間ずつ睡眠不足を重ねている人は、1時間ずつ睡眠不足の人よりも、同様にはるかに多くミスを起こし、単位時間あたりに処理できる情報量が下がります。(論文: Van et al., “The cumulative cost of additional wakefulness” Sleep. 2003 Mar 15;26(2):117-26.)

 

このため、経営学の権威であるHarvard Business Reviewはこう書いています。

「徹夜すること。あるいは5時間睡眠を1週間続けることは、血中アルコール濃度0.1%(酒気帯び運転で捕まる3倍の濃度)のパフォーマンス低下と等しい。『アイツはなんて立派な従業員なんだ! 彼はいつも飲んだくれている!』なんて台詞を言うわけがないが、睡眠を犠牲にして働く人を称賛することはこれに等しい」 (Harvard Business Review. 2006. “Sleep Deficit: The Performance Killer”)

 

日々のパフォーマンスを高め、そして健康を作るために、睡眠に気を配ってみませんか!

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