Monthly Archive 1月 2020

第66回日本学校保健学会で、高校生の睡眠に関する調査結果と、こどもみらいが提供する睡眠指導プログラムの効果について発表しました

~高校生の半数が睡眠に問題・登校意欲や欠席率に影響~

2019年11月29日から3日間、代々木オリンピックセンターで開催された「第66回日本学校保健学会」において、日本ではあまり類例を見ない高校生を対象とする睡眠の実態調査および睡眠改善プログラム「eSLEEP」の効果についての発表が行われました。

今回発表された研究は、2017年から2018年にかけて、7つの高校・3305名の生徒を対象とした睡眠に関する実態調査と、この中から平均して週に1回以上の欠席を行い、かつ学術的利用や発表に同意した224名を対象とした睡眠指導プログラム「eSLEEP achademic」の効果を検証したものです。

 

今回の調査によって、高校生のおよそ半数が睡眠に関する問題を抱えていること、また、睡眠の問題は、通学意欲の低下や欠席率の悪化と関係することが示されました。

また、睡眠の問題がある生徒に対し睡眠指導プログラム「eSLEEP achademic」を適用した効果について、プログラムを受けたグループと受けなかったグループを比較すると、プログラムを受けたグループでは睡眠の質(PSQI*)、生産性指数(SPS*)、退学率の有意な改善が見られ、そして欠席率はプログラム実施前の21.82%から9.85%へと大幅な改善が見られました。

 

中高生の睡眠の問題は不登校や退学の一因と考えられていますが、今回の研究は、適切な睡眠指導は実際に欠席率を改善することや、不登校や退学に効果がある可能性を示しています。

この研究結果は、株式会社こどもみらいが提供する「eSLEEP」および「eSLEEP achademic」のサービス・製品開発に活かされています。

 

株式会社こどもみらいでは今後も、「科学的根拠のある健康経営」を支援するための活動を進め、ストレスチェック「STRESCOPE」や睡眠改善プログラム「eSLEEP」などのサービス改善に努めて参ります。

 

学会発表概要

第66回日本学校保健学会

発表日:2019年11月30日(土) 

発表者:志村哲祥

演題名:

O30p-G-02 多施設共同研究:高等学校における睡眠の実態の調査

O30p-G-03 多施設共同研究:高等学校における睡眠と欠席・通学意欲との関連の分析

O30p-G-04 構造化された睡眠衛生指導は学生の退学を予防する:多施設ランダム化比較試験

 

株式会社こどもみらいについて

株式会社こどもみらい( https://cfltd.co.jp/ )は、科学的根拠 に基づいた健康経営を推進するプロフェッショナルチームで す。睡眠と健康に関する研究「Sleep & Health Research」、睡眠 改善プログラム「eSLEEP」、多⾯的なストレス対策の要となる ストレスチェック「STRESCOPE」などを提供しています。 

 

eSLEEPについて

eSLEEP( https://esleep.jp/ )は、株式会社こどもみらいが2012年から睡眠研究医主導のもと、医師・心理士・保健師を中心として提供している睡眠改善プログラムです。組織単位で睡眠と生活習慣の問題を医学的に評価・分析し、睡眠コンサルティングと個別指導による改善を通して、メンタルヘルス疾患・身体疾患の予防および生産性の向上を図ります。2015年には教育現場における出席率の向上や退学予防効果も明らかにしました。

 

STRESCOPE について

STRESCOPE( https://strescope.jp )は、株式会社こどもみらいが提供する、医学的根拠に基づいた具体的な提案によりストレス改善を目指すためのストレスチェックサービスです。厚労省所定の項目に独自の項目を加えてストレス要因を特定し、個人向けに生活習慣の観点も含めた具体的な改善提案を行うほか、集団分析により企業が取り組むべき事項を明らかにするなど、健康経営のための投資対効果にこだわり、精神科医・産業保健師を含むプロフェッショナルチームにより運営されています。

 

本件に関するお問合せ先

株式会社こどもみらい info@strescope.jp

 

「週末の寝だめ」が健康に悪影響!?

平日は仕事や学校が忙しくて睡眠不足が続き、週末に寝だめをして睡眠不足を解消している、なんて方は多いですよね。土曜の朝寝坊を楽しみに一週間がんばれるって方も中にはいらっしゃるでしょう。

その睡眠習慣、見直した方がよいかもしれません。

 

毎日の睡眠不足が借金のように積み重なっていくことを「睡眠負債」といいますが、平日の睡眠不足でたまった睡眠負債を週末の寝だめで返済できていると考えている方もいらっしゃるかと思います。しかしながら、これには大きな誤りが潜んでいます。実際、週末の寝だめで睡眠負債が帳消しになるわけではありません。そればかりか体に悪影響が及んでいるのです。

 

例えば、週末に寝だめをすると、太りやすくなりインスリン感受性が低下することが明らかになっています。インスリン感受性が低下すると、筋肉や脂肪組織の糖取り込み能も低下し、血糖値が下がりづらくなり、2型糖尿病になるリスクが高まります。これは、米コロラド大学ボルダー校の睡眠・時間生物学研究所等が行った研究で明らかになっており、当該研究は、健康な成人男女36人を以下の3つのグループに分け9泊させ、体重増加やインスリン感受性等を評価することを目的としたものです。

第1グループ:9日間ともに1日9時間寝ることが許されているグループ

第2グループ:9日間ともに1日5時間に睡眠が制限されているグループ

第3グループ:平日の5日間は5時間に制限、週末の2日間は制限なし、残りの2日間は再び5時間に制限されているグループ

結果として、第2グループおよび第3グループでは、睡眠不足により食後のエネルギー摂取量と体重が増加しました。また、第2グループでは全身インスリン感受性は13%低下し、第3グループでは全身のみならず肝臓、筋肉のインスリン感受性が9-27%もの低下を示しました。

Depner CM, et al. Curr Biol. 2019 Feb 11.

 

また、週末に寝だめをすると、生理が重くなるという研究結果があります。明治薬科大学の駒田准教授を中心とする研究チームが女子学生100名を対象に行った研究によると、休日に寝だめを1時間以上すると、月経症状が重くなる可能性があることが示唆されています。具体的には、生理の痛みが増し、むくみやすくなるというものです。

Komada Y ,et al.Chronobiol Int. 2019 Feb;36(2):258-264

 

このように、「週末の寝だめ」は健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。次回のコラムでは寝だめについてもう少し掘り下げて、寝だめによって生じるソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)について取り上げ、それを防止するための手立てについてお話していきたいと思います。