Monthly Archive 2月 2020

「週末の寝だめ」でパフォーマンス悪化

「週末の寝だめ」が平日のパフォーマンスを悪化させていること、ご存じでしたか?週末の寝だめ習慣、見直した方がよいかもしれません。

1月7日のコラム では、週末の寝だめが健康に悪影響を及ぼすことを説明しました。今回は、週末の寝だめの弊害についてもう少し掘り下げて、睡眠習慣をどう見直したらよいのか、紹介していきたいと思います。

平日は睡眠不足が続き、週末に寝だめをしたものの、月曜の朝から「からだがだるい」「疲れがとれていない」「調子があがらない」なんてことはありますよね。実は、この不調の原因、実は社会的時差ボケ(Social Jet Lag)にあります。社会的時差ボケ、耳慣れない言葉かもしれませんが、アメリカやヨーロッパへ旅行した時の時差ボケを思い出していただければわかりやすいかと思います。こういった海外旅行の場合は、旅行中、ぼーっとしてしまったり、倦怠感、日中のねむけ、疲労感、頭重感をおぼえたり、また帰国後も本調子に戻れなかったりしますよね。この時差ボケと同じことが、週末の寝だめによって引き起こされているのです。

 

もう少し専門的な話をしていきましょう。社会的時差ボケとは、時間生物学者のローネンバーグ教授が2006年に提唱した概念で、社会的な時間と生物時計の不一致によって生ずる不調をさします。 わたしたちの多くは、仕事や学校、家事などの社会的制約により、「仕事のある日」には目覚まし時計などで起床することで、睡眠不足となってしまいます。 一方、「仕事のない日」では蓄積した睡眠不足を解消するため、長時間の睡眠をとろうとします。 こうした平日と休日との睡眠のタイミングのズレにより、社会的時差ボケが生じてしまうのです。この週末に寝だめすることにより生じる社会的時差ボケが、翌週平日の眠気度と疲労度をアップさせることが研究で明らかにされています。オーストラリアFlinders大学のA.Taylor教授らが行った研究によると、平日の睡眠習慣を続けたグループと週末に寝だめをしたグループの翌週の眠気度と疲労度を比較した結果、「寝だめをしたグループの方が翌週の月曜日・火曜日の眠気度や疲労度が著しく高い」と結論づけられました。

また、社会的時差ボケがパフォーマンスを低下させるというエビデンスがあります。スペインのComplutense大学のF. Díaz-Moralesらが12-16歳の学生796人に対して行った研究によると、「社会的時差ボケが生じている学生は、学業成績(GPA)や認知機能が悪化する」ことが示されました。Juan F. Díaz-Morales, et al. The Journal of Biological and Medical Rhythm Research. Vol32,2015. Social jetlag, academic achievement and cognitive performance

このように、月曜の朝から「からだがだるい」「疲れがとれていない」「調子があがらない」のは、週末の寝だめに原因があるのかもしれません。では、月曜の朝を絶好調でむかえるためにはどうすればよいのでしょうか? 理想としては、平日も週末も同じ時間に起きて同じ時間に寝ることです。しかしながら、平日は仕事や勉強、家事で忙しくて睡眠不足だし、週末はゆっくり寝ていたい、そんな方も多いと思います。ここでポイントとなってくるのは、「社会的時差ボケ時間」になります。社会的時差ボケ時間は平日の眠りの中間時刻と休日の眠りの中間時刻の差で計算されます。具体的にみていきましょう。

以下の図1をご覧ください。

図1

平日は0時に寝て6時に起きているので、平日の眠りの中間時刻は3時になります。一方、休日2時に寝て12時に起きているので、休日の眠りの中間時刻は7時になります。よって、社会的時差ボケ時間は4時間となります。これはインドやパキスタンに旅行した時の時差になります。休日のたびにインドやパキスタンに旅行したのと同じことが起こってしまっているのです。時差は少ない方がいいですよね。上記の例でいうと、休日2時に寝て12時起きていたのを0時に寝て8時に起きるように改めれば、休日の眠りの中間時刻は7時から4時になり、社会的時差ボケ時間は1時間に短縮されます。このようにすれば、時差ボケをある程度、防止することができます。また、週末に2-3時間朝寝坊をしているならば、その睡眠時間を20-30分ずつ平日に割り振るのも有効でしょう。さらに、社会的時差ボケ時間を計算してみて、睡眠不足を早寝で補うことも考えてもよいかもしれません。

そうはいっても、通勤通学時間が長い、残業や補講があるなどの理由で、平日は慢性的な睡眠不足、その不足分を週末たっぷり補いたいという方もいらっしゃるかと思います。まずは、社会的時差ボケ時間を意識して、20分30分でも短縮することから始めてみてはいかがでしょうか。睡眠計画を見直して、月曜の朝を絶好調でむかえましょう!

 

埼玉県南部高等学校等保健主事・養護教諭合同研修会の講演アンケートより

株式会社こどもみらいでは、睡眠や健康に関する講演を企業・学校向けに行っています。
埼玉県南部高等学校等保健主事・養護教諭合同研修会で行われた睡眠に関する講演・ワークショップのアンケートでいただいたご感想を一部ご紹介します。

講演について

・カフェインの話や、睡眠の条件付けの話など、生徒にすぐ話せるような話題をたくさんいただきとても勉強になりました。保健室に来室する生徒の中には睡眠が原因で体調不良の状態になり、作業のパフォーマンスが落ちている生徒がいます。日本の高校生の睡眠時間が世界的にみてもとても少ないことを知り、そのような状況の中でも生徒は毎日登校し、勉強に部活に頑張っていることを思うと、少しでも何か手助けやアドバイスできるよう頑張りたいと思います。

・睡眠が大切なことを改めて感じました。特に熟睡できないと「うつ」など心にも影響を与えることは驚きました。また、睡眠の大切な3要素「量・質・リズム」についてわかりやすく説明していただきました。睡眠に問題を抱えている生徒が多いので今回の研修内容はすぐに役立つ内容で有意義なものでした。

睡眠が及ぼす影響が、体調や生活習慣だけでなく退学、自殺にまで関係すると知り、またそのことを数値であらわしていただき、とても分かりやすく勉強になりました。生徒、自分、家族、職場の教員。いろいろな人が頭に浮かびました。また、面談の仕方についてもわかっているようでわかっていなかったこと。あらためて再認識できたことがとても良かったです。がんばろうって力になりました。

・自分がなんで早く起きるのか。仕事の責任の気がしていたが、老化と知り新たな発見でした。子どもの朝の不機嫌の意味も分かりました。夜中に寝て、昼近く起きることがだらしないと思っていましたが、パターンの違いなのだとわかりました。自分の考えでパターンを変えるのは支障のない事なのでしょうか。

・科学的で大変わかりやすいご講義でした。カフェインが睡眠に影響があることは知っていましたが、具体的な影響を与える量やカフェインの半減期などは知りませんでした。また、中・高校生の時期は夜型になることも初めて知りました。

・本校の生徒の例を見ているような講演内容でとても参考になりました。遅刻する生徒、欠席の多い生徒がいるので、学校全体や学年で今日のような講演の高校生版があれば行っていただきたいと思いました。

 

ワークショップについて

・子どもとの信頼関係づくりのもと、できることを探りながら、本人の負担の少ない方法を、一緒に考えていくことの大切さを感じました。

・先生の保健指導のお手本も素晴らしかったです。生徒の生活内容を否定するのではなく、時間の使い方をデザインするやり方、とても参考になりました。

・ワークショップは実際の面接技法をデモンストレーションしていただき、実際の現場でイメージしやすくとても良かったです。

・ワークショップでは、他校の様子や課題等を共有でき、大変有意義なものになった。

一緒に考えていくことで何か光が見えてくることがあると、体験してわかった。

講演のご相談を受け付けています

講演をご希望の方、詳細のお問い合わせはこちらからご連絡下さい。
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こどもみらいでは今後も科学的根拠に基づいた睡眠および健康に関する情報の発信に努めて参ります。

株式会社こどもみらいについて

株式会社こどもみらい( https://cfltd.co.jp/ )は、科学的根拠 に基づいた健康経営を推進するプロフェッショナルチームで す。睡眠と健康に関する研究「Sleep & Health Research」、睡眠 改善プログラム「eSLEEP」、多⾯的なストレス対策の要となる ストレスチェック「STRESCOPE」などを提供しています。

eSLEEPについて

eSLEEP( https://esleep.jp/ )は、株式会社こどもみらいが2012年から睡眠研究医主導のもと、医師・心理士・保健師を中心として提供している睡眠改善プログラムです。組織単位で睡眠と生活習慣の問題を医学的に評価・分析し、睡眠コンサルティングと個別指導による改善を通して、メンタルヘルス疾患・身体疾患の予防および生産性の向上を図ります。2015年には教育現場における出席率の向上や退学予防効果も明らかにしました。

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STRESCOPE( https://strescope.jp )は、株式会社こどもみらいが提供する、医学的根拠に基づいた具体的な提案によりストレス改善を目指すためのストレスチェックサービスです。厚労省所定の項目に独自の項目を加えてストレス要因を特定し、個人向けに生活習慣の観点も含めた具体的な改善提案を行うほか、集団分析により企業が取り組むべき事項を明らかにするなど、健康経営のための投資対効果にこだわり、精神科医・産業保健師を含むプロフェッショナルチームにより運営されています。